
2014.08.07
楽しめ! 仏像(3/3) 日本最古の博物館で仏像の来た道に触れる
外国人観光客に大人気の仏像や大仏。最近では、日本人の間でも仏像文化に親しむ人が増え、楽しみ方も広がっている。今回訪れたのは日本最古の博物館「東京国立博物館」。ここでは、南アジアで誕生した仏像がシルクロードや海を渡って日本に伝来した歴史をたどることができる。
記事の見出しの「○○館×階△室」が展示場所を示す。
記載された展示館の階に移動し、こんな案内の「△室」をめぐればOK。
上野の東京国立博物館には5つの展示館があり、1日では回りきれないほど大規模。そのため公式webサイトには、短時間で鑑賞できるオススメのコース紹介がある。
その一つが、南アジアで誕生した仏像が日本に伝来した歴史をたどる「仏像大好きコース」。貴重な展示がめじろ押しだが、残念ながらWebサイトは日本語のみ。
そこで、今回はこのコースをめぐりながら、特別な知識無しでも楽しめる注目ポイントをご紹介!
インドのマトゥラーやパキスタンのガンダーラは、1世紀に世界ではじめて仏像が作られた地域。
スタートは「インド・ガンダーラの彫刻」エリア。最初期の貴重な作品が並ぶこの展示では、その後の仏像とは大きく異なる造形に注目したい。特にガンダーラの仏像の西洋的な顔立ちに驚く人は多いはず!
隣接する「西域の美術」エリアでは、インドから中国へと渡る過程の仏像を見ることができる。
交脚菩薩像 パキスタン・ガンダーラ クシャーン朝・2世紀
ガンダーラの仏像の彫りの深い顔は、ギリシャ彫刻の影響だとか。
菩薩頭部 中国・クムトラ石窟 唐時代・7~8世紀 (大谷探検隊将来品) シルクロードのオアシス都市の遺跡「クムトラ石窟」で見つかった作品。インドの仏像と比べてほしい。
「中国の仏像」エリア。インドから中国に仏像が伝わったのは1世紀ごろだが、国を挙げて造るようになったのは5世紀以降だとか。 。
続いては中国の仏教美術黄金期である5~10世紀ごろの作品が揃う「中国の仏像」エリアへ。時代が下って表現や素材がバラエティ豊かになり、美術鑑賞として飽きない。伝来や歴史的背景の解説も増え、多面的に楽しめる。
「朝鮮の仏教美術」エリアは展示数こそ少ないものの、その後日本へと伝来する造形も見られるなど、仏像の来た道を知る上で貴重。
重要文化財 十一面観音龕 中国陝西省西安宝慶寺 唐時代・
8世紀 (細川護立氏寄贈)もとは中国唯一の女帝、武則天(則天武后)が造営した光宅寺に安置されていた仏像だとか。そんな解説が4カ国語で紹介されている。
菩薩半跏像 三国時代・7世紀 (小倉コレクション保存会寄贈)朝鮮の仏像。足を組んでいる菩薩様はめずらしい?と思いきや、後ほど日本にも多く伝来したことを知る。
日本の仏像に行く前に、仏像大好きコースには興味深い寄り道が用意されている。「クメールの彫刻」と「東南アジアの金銅像」には、インドの影響を受けながら、中国や日本とはまったく別の発展を遂げた仏像が展示されている。ここまでの流れとのギャップがおもしろい!
ブッダ坐像 カンボジア・アンコール・トム東南部のテラス№65 アンコール時代・12~13世紀 (フランス極東学院交換品)アンコールの寺院を飾ったクメール彫刻の仏像はほほえんでいるようで親しみやすい。
釈迦如来坐像 タイ スコータイ様式・14~15世紀こちらはタイのスコータイ様式の仏像。丸みを帯びた造形と尖った髪型が特徴的。
19世紀後半に奈良の法隆寺から皇室に献納された宝物のうち金銅仏を中心に展示。
いよいよ日本の仏像とご対面! まずは6~8世紀ごろの小さな金銅仏が展示される法隆寺宝物館1階 第2室へ。前述の朝鮮の仏像に似た作品も散見されるなど、日本に伝わって間もないころの仏像の様子を垣間見られる。
寺院のお堂をイメージした本館1階11室。取材時には鎌倉時代(12~14世紀ごろ)の仏像が展示されていた。
クライマックスは日本ならではの発展を遂げた仏像が並ぶ本館1階 11室。特に注目してほしいのは、玉眼(仏像の目に水晶をはめ込む日本独自の表現法)などを駆使して造られた、イキイキとした表情。細部の美しさや、豊かな色彩にも魅せられるはず。
重要文化財 菩薩立像 鎌倉時代・13世紀玉眼だけではなく、上下の唇にも薄い水晶が入っている。憂いのある表情!
阿弥陀如来坐像 鎌倉時代・12~13世紀 静岡・願生寺蔵見えづらいがこちらも玉願。コース全体を通して、仏像の美しさが際立つ展示に。
この取材で印象的だったのは、ルーツからたどることで自国の仏像の魅力に改めて気づいたこと。皆さんも仏像が日本に来た道をたどって、いろいろな時代や地域の作品を見比べてみては?
*展示には入れ替わりがあるため、記事に登場した作品の展示がない場合もあります。
東京国立博物館
東京都台東区上野公園13-9
電話:03-5777-8600(ハローダイヤル)、 03-5405-8686(英語対応ハローダイヤル)
開館時間:9時半~17時(入館は16時半まで)
*土日祝(季節による)、特別展開催期間は閉館時間の延長も
休館:月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始
*ゴールデンウィークおよび8月13~15日は原則無休
入館料:一般620円、大学生410円、団体一般520円、団体大学生310円 *団体は20名以上
*高校生および18歳未満、満70歳以上は総合文化展は無料
アクセス:JR「上野」駅 公園口、または「鶯谷」駅 南口から徒歩10分
東京メトロ 銀座線・日比谷線「上野」駅 7番出口から徒歩15分、千代田線「根津」駅 1番出口から徒歩15分
京成電鉄「京成上野」駅 池之端口から徒歩15分
台東区循環バス「東西めぐりん」で「上野駅・上野公園」バス停から乗車し、1つ目のバス停が「東京国立博物館」前
http://www.tnm.jp/
※表示の価格はすべて、2014年6月取材時の税込み価格(消費税8%)です。