
2012.02.06
どうなってる?
防災グッズ最新事情
東日本大震災に見舞われた2011年、日本ではかつてないほど防災グッズへの注目が高まった。平時はつい忘れがちなものだけに、震災後に売り場を訪れて、その進化に驚く人も多かったという。都内屈指の品ぞろえを誇る「東急ハンズ 渋谷店」を訪ね、防災グッズの最新事情をうかがった。
防災グッズはカスタマイズの時代へ
非常食は好みのメニューを選ぶ
「かつては一通りそろった"防災セット"が主流でしたが、選択肢が広がった今では各家庭が必要な防災グッズを組み合わせる傾向に」と花登さん。ずらりと並んだ非常食はその象徴だ。
売り場でまず目を引いたのが"食"の充実ぶり。かつて日本で非常食と言えば乾パン中心の質素なイメージだったが、パンからピラフ、餅、カレーにシチューまで幅広い味覚がそろっていた。ずらりと並んだパッケージもカラフル。いったいいつから?
「実は当店では震災前から非常食を豊富にそろえていたんです。ただ、震災後のご来店で種類の多さを知り、驚くお客様が多かったですね」
そう話すのは「東急ハンズ 渋谷店」防災グッズ担当の花登一晃さん。保存技術の向上でバリエーションが広がり「好きなメニューを組み合わせるお客様が増えている」のだとか。餅は水だけで柔らかく戻り、シチューは付属の発熱剤で加熱できるなど、火や電気を使わずにおいしく食べられる工夫にも思わず関心だ。
シチューは付属の発熱剤と発熱溶液を反応させて加熱するしくみ。
・ホリカフーズ レスキューフーズ 一食ボックス シチュー&ライス(870円)
*以下、金額はすべて税込み
パックの食品を袋の中で20分加熱。袋のすき間から蒸気が立ち上る。
そのまま10分蒸らして盛りつければ、具だくさんのシチュー&ライスが完成!
やはり一番人気はお米だそうで、常温の水で戻すこともできる「アルファ米」は驚くほどの品ぞろえ。以前は独特の風味が苦手という人もいたが・・・? しかしその点は「海外出張や登山でも重宝されるアルファ米は、常に改良が加えられています。味も以前とは別物で、とてもおいしくなっています」と花登さん。山好きなら、登山であれこれ試してみて、お気に入りを非常食用にストックしてもよさそうだ。
パンの缶詰は保存技術の向上をもっとも実感できる非常食の一つ。いつでも焼きたてさながらの味が堪能できる。
・左:缶入りソフトパン レーズン(352円)
・右:缶入りソフトパン オレンジ(352円)
*以下、金額はすべて税込み
水に3分浸すだけで柔らかな食感が楽しめるいそべ餅。のり、しょう油付き。あんこやきなこといった味のバリエーションも。
・保存用即席乾燥餅 いそべ餅(420円)
一番人気はアルファ米。白米や炊き込みごはんといった和食はもちろん、ドライカレーやピラフも人気だとか。
・左:マジックライス保存食 ドライカレー(357円)
・中:アルファ米 梅わかめご飯(357円)
・右:アルファ米 炊込みおこわ(339円)
防災グッズのハイテク化
その機能やいかに?!
ワイドなパネルが特長のポータブル太陽光発電機。ノートパソコンなど大容量の電力を要する電子機器の充電に適している。
・ソーラーゴリラ(26,250円)
最新スマートフォンは欠かさずチェックしても、防災グッズがどんなハイテク化を遂げているのかはあまり知らないもの。あらためて見てみると、これがなかなかに興味深い。
計画停電と節電で電気のありがたみを実感した震災後は「特に電力にまつわる商品へのニーズが高まりました」と花登さん。
例えば、大容量の充電に適したポータブル太陽光発電機が密かな人気だとか。ノートパソコンやスマートフォンが手放せない今どきのニーズだ。手回しで充電できるラジオ一体型ライトも同じ"発電モノ"だが、こちらは若干ローテク寄り。それだけに停電時には心強い。
また、気になるのが「水電池」なる謎の商品。花登さんに特長を尋ねると「水を入れると発電する電池です。それまでは放電しないので、未開封なら20年未満という長期の保管が可能」と言うから驚きだ。
ハンドルを回したり、握ったりして充電できるラジオ一体型ライトは多数販売されていた。こちらはライトに省電力のLED採用し、携帯電話の充電もできるスグレモノ。
・LEDマルチポータブルランタン(5,250円)
本体の穴に水を注ぐと発電する「水電池」。ジュースやコーヒー、何と唾液でもOK。
通常の乾電池の何倍も長く保管できるので、いざというときに安心。
・NOPOPO 災害時用 水電池 単3形3本(600円)
NASA開発の技術を使った防寒用ブランケットも何種か売られていた。こちらは表裏が金/銀で分かれたタイプ。銀色の面は体温を反射し、金色の面は外界の熱を吸収する。
・スペースブランケット オレンジ×シルバー(661円)
ほかにも、iPhoneに接続して使い、結果をtwitterなどにポストできる放射能測定器や、NASA開発の技術を使った超軽量の防寒ブランケットなど、こんなモノがあったのかという意外なハイテク系防災グッズを発見できた。
iPhone、iPod Touchにつないで使う放射能測定器。専用ケーブルで接続する。
・放射能カウンター RDTX-PRO(34,800円)
測定開始後、2分ほどで結果が。東急ハンズ 渋谷店前は0,028msv/hという低い値。誤差±5%という精度の高さもこの測定器の魅力だ。
測定結果はFacebookやtwitter、Google マップで共有することも。マップ上には世界中の測定結果が表示されている。
家で場所を取らない
サバイバル系防災グッズ
コンパクトにたためるヘルメット。家族の人数分そろえても重ねれば場所を取らない。
・タタメット(5,250円)
災害時には電気もガスも上下水道も使えないシビアな状況も想定される。そんなシーンで役立つ、いわばサバイバル系とも呼ぶべき防災グッズに目を向けると、そこにはある傾向が。前述した防寒用ブランケットをはじめ、折りたためるヘルメットや、ストロー型の浄水器など、コンパクトに収納できるグッズが目立つのだ。
「大きなヘルメットを家族全員分用意すると、かなり場所を取ります。住まいのなかでは邪魔に感じて、どうしても奥へ奥へとしまいたくなるんですよね。それでは非常時に役立ちませんから、コンパクトに収納していつでも持ち出せる場所に保管するのが理想です」と花登さん。
この浄水器は何とストロー型。コンパクトで保管しやすく、携帯にも便利だ。
・ストロー浄水器 mizu-Q(2,415円)
川や池、プールやお風呂の残り水など、殺菌されていない水の場合は、まず付属の除菌剤を入れ、かき混ぜる。
2分経ってからストロー型の浄水器を使って飲む。特殊なフィルターで雑菌などが濾過され、安心して飲める水に。
もちろん非常時に持って避難するときも軽く、小さい方が好都合。エネルギー源としてある程度のボリュームが必要な非常食や、防災用途以外でも常に軽量小型を目指すハイテク系と比べて、サバイバル系防災グッズは機能をコンパクトにぎゅっと凝縮するアイデアが際立っていた。
やかんも火も不要。お湯が沸かせる発熱剤付きのボックス。赤ちゃん用のミルクづくり、レトルト食品の温めにも便利。
・湯わかしBOX 基本セット(2,079円)
シンプルな発想に思わずうなったのがこの簡易トイレ。ふちを折り返すことでしっかりと自立するので、箱などの仮設便器が不要だ。専用の台紙を洋式便器にセットして使う。
・吸水シート付ポーチトイレ(4,410円)
ポケットに収まるサイズの固形燃料&専用コンロ。高カロリーの火力ながら、目に見えるほどの煙が出ないのもうれしいポイント。
・エスビット 固形燃料(525円)
・エスビット ポケットストーブ(1,155円)
東急ハンズ 渋谷店
東京都渋谷区宇田川町12-18 電話:03-5489-5111(自動音声対応)
営業:10時~20時30分
http://shibuya.tokyu-hands.co.jp/