2013.09.20
古くはラジオ部品にはじまり、家電、パソコン、オタク、アイドルと、“○○の街”という呼び名が移ろい続ける秋葉原。訪れる人がめまぐるしく入れ替わる中、それでも愛され続けるグルメ店がある。その魅力に迫ってみよう。(トップ画像:とんかつ冨貴)
つまり、アキバにちょうどいい!
「かんだ食堂」
さしみ、焼き魚、炒め物に揚げ物まで、家庭的なおかずをライス&みそ汁が付いた定食でいただける「かんだ食堂」。創業したのは1963年。第二次世界大戦で焼け野原になった秋葉原が家電の街として復興を遂げ、活気に沸いていたころだ。当時は日本のあちこちの街にこのお店のような大衆食堂があり、庶民の胃袋を満たしていた。
時代の波に押され、今やなつかしスポットと見られがちな大衆食堂だが、こちらのお店は現役バリバリ。食事どきには秋葉原で働く人や買い物客が大挙押し寄せ、店内はあっという間に満席に。しかし、人気メニューの一部をあらかじめ調理しておくなど、スピーディーに提供する工夫があるため、回転は驚くほど早い。
さっそく人気の「豚生姜焼定食」を注文すると山盛りで到着。濃いめの甘辛ダレが効いていて、同じく山盛りのライスが進む進む。ちょっと前までグルメ不毛の地と揶揄された秋葉原も、気が付けば高級店を含めて飲食店のバリエーションはだいぶ豊富に。でも、この街に来たら、やっぱりかんだ食堂でわしわしメシをかき込みたいという人は多い。秋葉原で働く人も、アニメやアイドル、PCパーツ目当てのオタクたちも、このスピード、ボリューム、気取らないうまさがちょうどいいようだ。
ライスは本当にボリュームが多いので、大食いでなければ「ライス小」が◎。「もともと青果市場で体を動かす人たちがお客さんだったのでこの量なんです」と二代目オーナーの浅沼昌司さん。日本最大の青果市場が秋葉原からなくなって約25年。時代とともに街を訪れる人が入れ替わっても、かんだ食堂のこだわりは支持され続けている。
かんだ食堂
東京都千代田区外神田4-4-9 電話:03-3253-6255 営業:平日11時~15時半 17時~22時半 土11時~18時 定休:日・祝
名物おばちゃんたちの心のこもった料理ともてなし
「とんかつ冨貴」
「とんかつ冨貴」の創業も、かんだ食堂と同時代の1964年。とんかつとは、豚肉に小麦粉やパン粉をまぶして揚げた日本発祥の料理で、お店でも家庭でもおなじみの身近なメニュー。名物おばちゃんたちが切り盛りするとんかつ冨貴も、そんな日本人ととんかつの関係を象徴するような親しみやすい、いや"親しみやすすぎる"お店だ。
お店の看板メニューは「ロースカツ定食」。サクっとした揚げたての衣と豚ロース肉のうまみ、脂身のほどよい甘さが抜群の相性。お好みのフライをトッピングする人も多く、中でも「クリームコロッケ」が人気だとか。「カキフライ」は冬季限定メニューで、このお店のもう一つの名物。精米したてをガスで硬めに炊きあげたライスも絶品。豚汁や漬け物も、手作りならではのほっとする味わいだ。
料理とともにお店の魅力となっているのが、ここを切り盛りする名物おばちゃんたち。常にタランティーノ映画顔負けのマシンガントークが繰り広げられていて、お客さんもどんどん巻き込んでいく。「もっと食べなきゃ、午後から仕事できないわよ」と母のような気づかいも。「フランス人のお客さんにフランス語の"おいしい"を教わったの。えっと、何て言うんだっけ?」と名物おばちゃんの一人、瀬戸芙美子さん。外国人相手でも人なつっこさは変わらない。
「ここだけは、まだ昭和30年代(1955~65年)なんだよ」と笑うのは、長年の常連だという男性客。右肩上がりの経済で国中に希望が満ちていた時代。今より何倍も人情味にあふれていた、あのころの日本の雰囲気をぜひこのお店で!
とんかつ冨貴
東京都千代田区外神田3-11-11 電話:03-3255-0607 営業:11時半~16時 定休:水
アキバ人を魅了し続ける、ここでしか味わえないカレー
「カレー専門店 ベンガル」
実は秋葉原はカレーショップの激戦区としても知られている。その中でもっとも歴史が古いのが、1973年創業の名店「カレー専門店 ベンガル」。メイドカフェやPCパーツ店がひしめく秋葉原の中心地にありながら、店内は落ち着いた雰囲気で、つかの間のくつろぎを享受できる。
No.1人気メニューは「ビーフ角切りカレー」。酸味とほのかな苦みが口の中を駆け抜け、まろやかな印象の辛みがあとからしっかり立ってくる。サラリとした食感含めて近いのはインドカレーだが、欧風カレーを思わせる深みやコクもあり、インドとも欧風とも、欧風カレーを独自に進化させた日本のカレーとも違う、まさにここでしか味わえないおいしさ。ほろりと崩れる柔らかな角切りビーフが大きめサイズなのもうれしい。
おいしさの秘密はお店自慢の「純カレー粉」。創業した先代も、現在の二代目オーナーもスパイス専門の輸入商社出身。つまりはその道のプロだからこそ出せる味と香りなのだ。純カレー粉は調合も製法も変えておらず、長く魅了され続けるファンも多い。「親子二代で常連というお客様もいらっしゃいます」と二代目オーナーの浅見文隆さん。
最近、秋葉原ではチェーンのカレーショップも目立つようになった。「ウチは毎日朝から手作りで仕込んでいますので、その味を楽しんでいただければ」と浅見さん。40年間愛され続けるベンガルのカレー、秋葉原が世界に誇るグルメの一つです。
カレー専門店 ベンガル
東京都千代田区外神田3-10-12 電話:03-3255-4410 営業:11時半~15時 17時~21時 定休:月(祝日の場合は翌火曜)
http://www.bengal-curry.com/